2024.01.29
コラム
2024.01.29
自宅のリースバックは、不動産所有者(住宅の持ち主)が急な現金の調達を必要とする場合や、老後の生活資金を確保したい場合に考えられる不動産取引形態の一つです。この記事では、自宅のリースバックについて、誰が向いているのか、後悔する可能性、注意すべきことについて詳しく解説します。
自宅のリースバックとは、不動産所有者(自宅の持ち主)が自分の家を特定の会社(不動産会社やファイナンス会社)に売却し、同時にその自宅を賃貸契約することにより借りることで住み続けるという取引形態です。この不動産取引により、即座に現金を手に入れられ、同時に同じ自宅に住み続けられます。
自宅や持ち家は、多くの人にとって生活の拠点であり、長年の夢が叶った形となった大切な場所でしょう。しかし、生活環境や家計の経済状況が大きく変化する際、自宅を売却して現金を必要とする場合が生じることがあります。この際、リースバックが選択肢として浮かんできますが、その決断は後に後悔をもたらす可能性があるかもしれません。
自宅を売却し、それを賃貸として借りることは、ある意味自宅との別れを意味します。そのまま住み続けられるとはいえ、長年の思い出が詰まった場所を手放すことに対する感情は、後に後悔の原因となるでしょう。とくに買戻しができなかった場合を想定するとなおさらです。また、家族や子供たちの成長に関連する思い出や、特別な瞬間がたくさん詰まっているならば、自宅から離れることは非常に大きな決断になるでしょう。
リースバック契約を選択する主な理由の一つに、早急な現金調達の必要性があります。急な医療費や生活費、投資機会への資金準備など、現金が急に必要とされる場面では、先述したようにリースバックは非常に有効な選択肢です。しかし、この「現金→思い出の詰まった持ち家」というトレードオフは慎重に検討しなければなりません。買戻しができない可能性も踏まえ、将来的な住宅を売却する可能性を考慮しつつ、本当にリースバックを検討するべきかどうかの判断を下す必要があります。
また、自宅のリースバックは、ある意味で長期的に家計への経済的な影響を大いに及ぼします。後述でも説明しますが、家賃の支払いと固定資産税などの税金の支払いのトレードオフが発生します。どちらが将来的に見てメリットが大きい選択肢かを判断しなければなりません。
自宅のリースバックには、向いている人と向いていない人がいます。
ここでは、向いている人について紹介します。リースバックが向いている人は以下のような人です。
突然の医療費や教育費、修繕費など、急な支出が発生する際に自宅のリースバックは非常に有効な策です。不動産を売却して手放しはしますが、売却前と同じ家で同じ生活を送れるうえに即座に現金調達が可能であるため、急な支出への対応に非常に役立ちます。
・自宅を手放さずそのまま住み続けたい人
自宅のリースバックという選択肢をとることで、住んでいる場所を変えずに生活を維持し続けられます。そのため、地域やコミュニティに愛着がある人や、子供の通学圏などを考慮する人にとっては非常に魅力的な選択肢だと言えるでしょう。
リースバックという選択肢をとることで、税金に関しての恩恵があります。通常、持ち家を保有していれば、不動産を所有しているため都市計画税や固定資産税の支払いがあり、家計にとって大きな負担になるでしょう。しかし、リースバックを選択すれば、所有権を手放すことになるため、こうした都市計画税や固定資産税の支払いの必要がなくなります。もちろん家賃は発生してしまいますが、税金で悩まされている人にとっては大きなメリットだと言えるでしょう。
向いていない人は、以下のような人です。
自宅をリースバックすると、当然ながら家賃の支払いが発生します。税金による支払いを抑えたいと考えてリースバックしたとしても、長期的に見ると家賃支払いのほうが高くついてしまう可能性があります。加えて、将来的に買戻しのオプションを行使したいと考えても、リースバックの場合だと売却時よりも高い価格で買い戻さなければならない可能性があり、注意が必要です。
自分の死後、親族の誰かに不動産を相続したいと考えているのであれば、リースバックは向いていないでしょう。リースバックするということは、その家の所有権を失うということになるため、相続できないのです。逆に、相続関係で親族内で揉めたくない人にとっては、あえてリースバックを選択するといいかもしれませんね。
リースバックは魅力的な不動産取引形態ですが、一方で契約時には注意すべきポイントが多いことも覚えておきましょう。この項では、リースバック契約時に注意すべきポイントをまとめています。
リースバック契約は、不動産会社やファイナンス会社と取引します。その際、信頼性の高い業者を選定するようにしましょう。評価の項目としては、リースバックの実績がどれくらいあるのか、評判や口コミはどうであるか、その地域に精通した会社であるかなどを基準にするといいでしょう。長期的な信頼性を重要視して、不動産会社やファイナンス会社を選びましょう。
リースバックの契約書は非常に重要です。契約書には、契約の条件や物件の詳細が記載されていますが、中には口頭で説明のみ行われ、契約書には記載されていない内容があります。契約書に記載されておらず、口頭で契約内容を確認したとしても、後々「言った」「言っていない」の論争が必ず起こります。とくに、契約期間や買戻し特約、支払いスケジュール、賃貸料金などは必ず確認しましょう。契約内容を詳細に確認し、納得がいくまで契約書のすり合わせを行いましょう。
リースバックの契約は法律関係の内容が絡みます。そのため、法律の専門家からの助言を受けるようにしましょう。契約を交わす前に、弁護士や不動産専門家の助言を受けることをオススメします。こうした専門家は契約書の内容を正確に理解し、不明確な部分を解決することに一役を買ってくれます。
リースバック契約は、非常に長期的な契約になります。将来的にどのようなライフプランを送りたいのかを考え、資金計画に落とし込む必要があります。そのライフプランとリースバック契約が合致しているかを確認します。そうすることで、リースバックという選択肢は最適なのか、他の選択肢を検討する余地はないのか、などを再検討でき、後悔しない選択肢を選べます。
リースバックに似た資金調達方法に、不動産担保ローン、リバースモーゲージの二種類の方法があります。それぞれ詳しく解説します。
リバースモーゲージは、高齢者向けの金融商品として金融機関から紹介される取引形態です。リバースモーゲージは、自宅の価値を担保にして、定期的に融資を受けて資金を調達する方法です。高齢者は、住み慣れた自宅で生活しながら、生活費や医療費を賄うために利用する資金調達方法としてリバースモーゲージを利用します。この方法は、自宅の価値を存分に生かしつつ、融資を受けられ、高齢者にとって大変人気の取引形態になっています。しかし、契約内容や金利について正確に理解していなければ、後々後悔することになるでしょう。
不動産担保ローンは、不動産を担保にして融資を受ける方法です。リバースモーゲージと同じように、自宅の価値を活かしながら大きな金額を借り入れられます。不動産担保ローンも、リバースモーゲージと同様に、契約時に金利や契約内容を正確に理解しておく必要があります。
リバースモーゲージ:リバースモーゲージは高齢者向けの金融商品であり、高齢者が自宅に住み続けながら医療費を賄うことや、安定した生活を送るという目的になります。
不動産担保ローン:不動産担保ローンは、不動産所有者が新しい不動産を購入する際や大規模な修繕が必要になった際、ビジネスにおける資金調達が必要な場合などに利用されます。
リバースモーゲージ:リバースモーゲージは、借り手が自宅を離れるか、なくなった場合に返済が行われます。高齢者が自宅に住み続けている限り、返済の必要はありません。返済は、住宅を売却することにより得られる利益により行われることが多いようです。
不動産担保ローン:不動産担保ローンは、通常定期的な返済スケジュールが組まれます。月々の返済が必要になり、借り手が負担します。
リバースモーゲージ:リバースモーゲージは、自宅を持っている高齢者が対象になります。
不動産担保ローン:不動産担保ローンは、借り手の信用力が重要で、収入や雇用状況によって借りる資格があるかどうかを判断します。
要するに、リバースモーゲージは高齢者向けの生活支援のため、不動産担保ローンは資金調達や投資に活用するための融資方法であり、融資であるかどうかがリースバックと異なる点です。
また、不動産市場には上記のような選択肢があり、それぞれのメリットやデメリットを吟味する必要があります。検討時には、金融の専門家や不動産コンサルタントなどの専門家の助言を受けつつ、自宅の価値を最大化できるような選択肢を選びましょう。
・自宅のリースバックとは、不動産所有者が自分の家を特定の会社に売却し、同時にその自宅を賃貸契約することにより借りることで住み続けるという取引形態
・リースバックに向いている人は、急な現金調達を要する人、自宅を手放さずそのまま住み続けたい人、税金対策をしたい人が該当する
・リースバックに向いていない人は、長期的なコストを抑えたい人、不動産を相続したいと考えている人が該当する
・リースバックの契約時に注意すべきことは、【信頼性の高い会社を選ぶ】【契約書を詳細に確認する】【法的な助言を受ける】【将来的な計画を立てておく】
・リースバックと似た資金調達方法にはリバースモーゲージや不動産担保ローンがあり、融資であるかどうかが大きく異なる点である
参考
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