2024.01.29
コラム
2024.01.29
近年、老後に備えて資金調達したいという方の新たな不動産活用方法として、リースバックが注目されています。
リースバックは、住宅を売却し現金化した後にも、そこに住み続けることができるというメリットがあります。
ところが、便利な方法である一方で、利用する際に見落としてはならない注意点がいくつかあります。
今回は、リースバックの利用を検討している方に向け、押さえておくべき4つのポイントを解説しています。また、不動産を活用したほかの資金調達方法との違いについても解説しているので、興味のある方はぜひ最後までご覧ください。
昨今話題となっているリースバックとは、保有している物件をリースバック会社に一旦売却して、売却後はリースバック会社からその物件を借りて住む、という仕組みの個人向けの不動産活用方法です。
従来あった「セールスアンドリースバック」は、おもに企業向けのものです。バブル崩壊後から業績が悪化した企業が、資金繰りのためにビルを一旦売却する、といったケースで用いられていました。名前の通り、「売って(セール)」、「借りて(リース)」、「買い戻す(バック)」の3つがセットになっていますが、個人向けのリースバックの場合は「買い戻す」というのはオプションである点が特徴です。
個人向けのリースバックでは、自宅を売却しても引っ越さずに住み続けることができ、使用用途の自由なまとまった資金を得られる、というのが大きなメリットです。
最終的な出口としては、契約を更新して賃貸として借り続けるか、借りるのをやめて退去するか、もしくは再び買い戻すか、3つの選択肢があります。
また、買い戻しのオプションは、契約するリースバック会社によって条件が異なります。いつでも買い戻せるタイプや、期間を定めているタイプがあるので、将来の買い戻しを前提としている場合は、条件の確認を忘れないようにしましょう。
つづいて、リースバックの利用時に押さえておくべき4つのポイントについてお話します。具体的にどのような点を理解しておけばよいのか、一つずつ詳しく説明するので、ぜひ参考にしてください。
まず、リースバックを利用する際に最も重要なポイントとしては、「いくらで家が売れるのか(買取価格)」ということが挙げられます。
物件の状態や、リースバック会社によっても異なりますが、一般的にリースバックで物件を買い取ってもらう場合の買取金額は、市場相場価格の7割〜9割程度になることが多いです。
仲介による不動産売買は、市場相場価格とほぼ同等です。
一方で、リースバックによる売却価格は通常の買い取りによる価格とほぼ同等です。
仲介による売却価格が3,000万円程度だった場合、買い取りやリースバックでの売却価格は2,100万円〜2,700万円程度となります。
仲介による売却は、他の方法よりも手間や時間がかかり、長いと一年以上の期間を要します。
ところが、リースバックであれば、数日〜数週間程度で現金化ができます。
ただし、買い取りの場合はすぐに引っ越しが必要となりますが、リースバックであれば引っ越しの費用などもかからず、今の家に住み続けることができるというメリットがあります。
市場価格については、ご自身で調べることもできますし、不動産会社に依頼することもできます。数ヶ所で見積もって、市場価格がどのくらいになるか把握したうえで、買取金額が妥当であるか判断するようにしましょう。
リースバックによって売却した家やマンションを借りる際、賃料は売却額(買取金額)の7〜13%程度の間で設定されることが多いです。
この割合は、買取金額と同様にリースバック会社や物件によって異なります。
例えば、買取金額が1,500万円で賃料が8%で設定された場合、月々の家賃は以下のように求められます。
年間の家賃=1,500万円×0.08=120万円
月々の家賃=120÷12ヶ月=10万円
リースバックでの家賃設定の目安は、決して高いわけではありませんが、契約時には敷金・礼金、契約更新時には更新手数料などプラスアルファの費用がかかることもあるため、事前にしっかりと確認しておくことが大切です。
リースバックを利用する際に必ず確認しておくべきなのは、賃貸借契約の内容です。
リースバックでは、おもに「定期賃貸借契約」で契約を結ぶ会社が多いです。定期賃貸借契約の場合、期間の満了後に契約が終了します。貸主と借主の合意があれば再度契約を結ぶことは可能ですが、それができない場合は家を明け渡す必要があります。
一方、「普通賃貸借契約」は、契約期間の満了後に契約の更新が可能です。そのため、借主が希望すれば長期的に家を借り続けることができます。貸主が契約の更新を拒絶するには、正当事由(家賃を数ヶ月滞納している等)が必要です。このように、借主の権利が非常に強い契約となるため、普通賃貸借契約を結べるリースバック会社は限られています。
一時的に家の所有権を手放して買い戻す予定がある場合や、いずれ引っ越しをする場合には定期賃貸借契約でも問題ないです。ただし、長期的に住み続ける予定の方は、「定期賃貸借契約」であれば再契約が可能なのか、必ず確認しなければなりません。
買い戻しを前提としてリースバックを契約する場合は、その条件についてもしっかりと確認が必要です。
買い戻しオプションが付いているリースバックは、契約時に「買戻し特約」もしくは「再売買予約」という契約も一緒に結びます。期間が決められている場合は、いつまでに買戻す必要があるのか定められます。また、買い戻しに必要な価格についても、その場で提示されるかもしくはその算出方法が定められます。期間や買戻し金額などは、口頭で約束するだけではなく、必ず書類に記載してもらうようにしましょう。後のトラブル防止のためにも重要なポイントです。
自宅に住んだままで資金を調達する方法としては、リースバックのほかにも「リバースモーゲージ」や、「不動産担保ローン」などが挙げられます。
ここでは、リースバックと両者との違いについても確認しておきましょう。
リバースモーゲージは、呼び方もリースバックと似ているため混同されがちなサービスです。
リバースモーゲージは、自宅を担保として融資可能額までの借り入れが可能です。契約中は利息の返済のみをして、元金は、おもに契約者が亡くなった後(契約期間終了後)に、自宅を売却して得られる代金を返済に充てる仕組みとなっています。契約によっては、相続人による一括返済が認められているケースもあります。
大きな違いとして、資金を得る方法がリースバックは「売却&賃貸」であるのに対して、リバースモーゲージは「融資」であるという点です。
不動産担保ローンは、その名の通り、自宅を担保にして融資を受けるという仕組みです。リバースモーゲージと同じで自宅は担保にとられるだけなので、所有権は事業者に移転しません。
「融資である」という点では、リバースモーゲージに近いですが、「契約者の死亡後に売却によって一括返済する」ということを前提としていない点が、リバースモーゲージとは根本的に異なります。
リースバックの概要や他の不動産の資金化方法について把握したところで、気になるのは「結局、リースバックに向いているのはどんな人なの?」ということですよね。
ここでは、リースバックに向いている人についていくつかのパターンを挙げてみます。当てはまる方は、リースバックの利用を前向きに検討してみてはいかがでしょうか。
ローンの返済ができない場合や、思わぬ事故や病気で治療費が必要になった場合、ほかにも介護費用や子どもの教育費など、すぐにまとまった資金が必要となったときに活用したいのが、リースバックです。通常の不動産売却よりも早く現金化できるうえで、今の家に住み続けることができます。
早く現金がほしい人に加えて、自宅を手放すのが惜しい人にとってもリースバックは有効です。「資金を得るために自宅を手放す必要があるが、住み慣れた家から離れたくない」「老後の資金を調達したいが、高齢になって住み慣れた場所から引っ越すのは不安だ」といった事情がある人は、リースバックが向いているといえます。また、事業用店舗を売却したい場合、店舗の移転が不要となるリースバックはメリットがあるといえます。
定年退職後、年金生活に不安を持っている人は少なくないでしょう。また、老後も趣味や旅行などの楽しみにお金を使いたいといった場合、リースバックによる現金化は有効です。
不動産は、相続の際に分割がしにくくトラブルになりやすいです。そのため、子どもたちが相続しやすいように、自宅を現金化するのも一つの手段です。
また、老人ホームなどの高齢者施設に住み替えるための資金づくりにも活用できます。売却してからも、入所までの期間に仮住まいを探す必要がないので、現金を用意した後で入居先を探したいという方にはオススメです。
リースバックは、将来的に買戻しを前提とした契約もできるため、「今はローンの返済が難しいが、いずれは自宅を買い戻したい」という方にもオススメです。一時的な理由でローンの返済が難しい場合や、急遽まとまった資金を要する場合に、いったんリースバックを利用して売却しておき、生活を立て直してから改めて買い戻すという方法を考えてみてはいかがでしょうか。
リースバックなら、住み慣れた家から引っ越さずにまとまった現金が手に入ります。①〜④で具体的に挙げた理由以外にも、一時的に返済に困っている方や、不動産を現金化しておきたい方に、リースバックはオススメです。
スバリ、「愛着のある自宅を手放したくはないが、急いでまとまった資金が必要!」という人にはリースバックが向いているといえます。
自宅から引っ越したくない人にとって、売却後も住み続けることができるリースバックはとても魅力的ですよね。
また、使用用途も自由なので、事業資金や生活費に余裕を持たせたいという方にも向いています。
このような場合に自身が当てはまるのであれば、ぜひ、リースバックの利用を検討してみることをオススメします。
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